被害者に過失がある場合に人身傷害保険金を支払った保険会社による損害賠償請求権の代位取得の範囲(最高裁平成24年2月20日判決)

人身傷害保険とは?

人身傷害保険とは,自動車事故によって被保険者が死傷した場合に,被保険者の過失割合を考慮することなく,約款所定の基準により積算された損害額を基準にして保険金を支払うという傷害保険のことをいいます。

この保険は,平成10年に損害保険の保険料率が自由化されたことを受けて,各保険会社が相次いで導入したものです。現在では,その付帯率は8割を超えているといわれています。

被害者に過失がある場合の代位権取得の範囲

本判決が出るまで,この論点については,「絶対説」,「比例説」,「差額説」(1.「人傷基準差額説」,2.「裁判基準差額説」)の見解があり,2.が下級審裁判例の大勢,学説上の多数説でした。2.「裁判基準差額説」は,被保険者の加害者に対する損害賠償請求権は,被保険者の被った損害のうち人身傷害保険金で填補されていない部分に優先的に充当され,それでもなお余りが出た時に限り,保険者が代位するという考え方です。この考え方が被害者である被保険者を最も保護するものです。

本判決は,「本件約款によれば,訴外保険会社は,交通事故等により被保険者が死傷した場合においては,被保険者に過失があるときでも,その過失割合を考慮することなく算定される額の保険金を支払うものとされているのであって,上記保険金は,被害者が被る損害に対して支払われる傷害保険金として,被害者が被る実損をその過失の有無,割合にかかわらず填補する趣旨・目的の下で支払われるものと解される。上記保険金が支払われる趣旨・目的に照らすと,本件代位条項にいう「保険金請求権者の権利を害さない範囲」との文言は,保険金請求権者が,被保険者である被害者の過失の有無,割合にかかわらず,上記保険金の支払によって民法上認められるべき過失相殺前の損害額(以下「裁判基準損害額」という。)を確保することができるように解することが合理的である。そうすると,上記保険金を支払った訴外保険会社は,保険金請求権者に裁判基準損害額に相当する額が確保されるように,上記保険金の額と被害者の加害者に対する過失相殺後の損害賠償請求権の額との合計額が裁判基準損害額を上回る場合に限り,その上回る部分に相当する額の範囲で保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得すると解するのが相当である。」として,上記2.「裁判基準差額説」に立ち,下級審裁判例の大勢を追認したものとなります。平成22年4月に施行された保険法25条1項が差額説を採用したことからも,本判決は妥当なものであると考えられています。

今後の検討課題

裁判基準差額説によれば,損害賠償請求権を人身傷害の保険金請求よりも先に行使した場合には、保険約款上は、過失相殺部分の全部又は一部について人身傷害保険金を受け取れなくなる可能性があるのに対し,人身傷害保険金を先に行使した場合には,過失相殺部分の全部について損害賠償請求ができることになり,整合性を欠くとの批判があります。

これについて,本判決の宮川光治裁判官は補足意見で,どちらが先に行使されるかで受け取る保険金額が変わるのは不合理であると述べ,約款を限定解釈する必要があると述べています。

まとめ

本判決は,平成24年に出されたものではありますが、保険約款上上記のような問題点があり、保険会社の対応としては、概ね宮川光治裁判官の補足説明を踏まえて、人身傷害保険を先行して請求するか否かで受け取れる金額が変わらないよう配慮してもらえることが多いように思います。

もっとも、担当者によっても対応が変わりますし、保険約款上は、人身傷害保険を後行して請求した場合に最終的な受領額が大幅に減るリスクがありますので、当事務所では、ご依頼者様が人身傷害保険に加入している場合は,まずは人身傷害保険金を受け取るようにしています。

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