後遺症と後遺症に対する不服申立について

後遺症とは、身体や精神機能に不完全な状態が残り完全に回復しない状態をいいます。
「後遺障害」と呼ぶことがありますが、いわゆる赤本(「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 」公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)においては、「後遺症」の用語が用いられています。
「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」においては、「後遺障害」の用語が用いられています。
一般的には、「後遺症」と「後遺障害」は同じ意味と考えられていますが、特に自動車賠償責任保険の等級認定との関係で、言及する際には、「後遺障害」の呼び方が使われます。

後遺障害の永久残存性ついて

後遺障害は、合理的な治療を施しても回復しない状態のことを言います。これを「永久残存性」と呼ぶことがあります(※1)。
もっとも、裁判実務では、いわゆる「むちうち症」の場合は、(後遺障害等級14級9号の場合に)後遺障害状態が5年程度で(労働能力が)回復すると考えられることがほとんどです(裁判例の中には、「永久残存性」がないことを指摘して、後遺障害でないと認定している裁判例もありますが、現在の裁判実務は、上記の運用でほぼ固まっていると考えられます)。
なお、いわゆる赤本(「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 上巻(基準編)」公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編 平成27年度版83頁)には、『「むち打ち症」の場合は、後遺障害等級12級で10年程度、同14級で5年程度に制限する例が多く見られるが、後遺障害の逸失利益が認められる期間は、具体的な症状に応じて適宜判断するべきである』との記載があります。

後遺障害等級の認定方法

後遺障害の等級は、後遺障害等級表に基づいて認定されます。
もっとも、同等級表は抽象的な基準を示したに過ぎず、実際の認定手続は、労災補償の障害認定基準に準拠して行われます。

後遺障害等級認定の主体

現在の実務上は、後遺障害に該当するのか否か該当するとして何級に該当するのかを決めるのは、損害保険料率算出機構です。
損害保険料率算出機構は、「損害保険料率算出団体に関する法律」に基づいて設置された機関であり、その名の通り本来は保険料率を算出して損害保険会社が保険料を決定するために設立されました。
しかし、損害額の算定を行う同機関には、後遺障害等級認定のためのノウハウも蓄積されることから、各自賠責保険会社は、後遺障害等級の認定を同機関に依頼するという運用が確立されています。
本来であれば、後遺障害がどの程度のものなのかということは、損害賠償額に関係があることですので、最終的には裁判所が決めることですが、裁判所も原則として同機関の認定結果を踏襲するため、より一層損害保険料率算出機構による後遺障害等級認定手続が重要なのです。

後遺障害等級認定に対する不服申立

損害保険料率算出機構によって認定された等級を争う方法としては、同機構内で用意されている異議申立手続を行うのが一般的です。
なお、異議申立手続は、複数回行うことが可能です。
また、自賠責保険・共済紛争処理機構(http://www.jibai-adr.or.jp/)による紛争処理を利用することもできます。
同機構は、自動車損害賠償保障法23条の5に基づいて設立されたか機関であり、損害保険料率算出機構と全く異なる(中立・公正な)機関という位置づけです。
したがって、異議申立とは異なる結果が認定される可能性があります(もっとも、処理内容が出るまでは、事案によりますが、異議申立手続と同等かそれより長期間の期間を要するとの覚悟が必要です)。なお、平成25年度は、872件中65件において、結果が変更されたとのことですので、変更率は、7%程度であるといえます(http://www.jibai-adr.or.jp/pdf/26/h25_hunsousyori.pdf)。
なお処理内容は、保険会社側は拘束されますが、申請者側は拘束されません(片務的です)。
もっとも、再度の異議申立や再度の紛争処理の申請を行うことはできず、処理内容を争う方法は、訴訟のみということになっています。
紛争処理は、書面審査であり、紛争処理の申請は、紛争処理申請書を提出して行うのが一般的です。紛争処理申請書の雛形は、インターネットでも公開されています(http://www.jibai-adr.or.jp/enterprise_04.html)。
なお、申請書だけでは申請理由を説明するのに足りない場合は別途、申請理由を記載した書面を提出することもあります。

※1自動車損害賠償保障法施行令第2条第2項は、後遺障害を、「傷害が治ったとき身体に存する傷害をいう」と定義しています。

(弁護士片島均)

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