裁判例は赤本基準の傷害慰謝料を採用しているか

赤本基準の運用について

入通院慰謝料については,実務上,公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(いわゆる「赤い本」)記載の別表Ⅰ及び別表Ⅱをもとに,賠償金額が算定されます(赤本基準)。
別表Ⅰは,いわゆる通常傷害に適用されるものであり,別表Ⅱは他覚所見のないむち打ち症等に適用されるものです。
平成27年度の赤い本の講演録において、過去の裁判例の傷害慰謝料の相場と赤本基準についての考察が掲載されました。
同考察は、実際に下された判決は、赤本基準とどのくらいかけ離れているのかという考察です。
上記考察の結論としては、「東京地裁民事第27部で平成21年1月から平成26年3月までに言い渡された判決のうち,別表Ⅱを適用するのが妥当とみられる事案の分析結果によれば,通院期間が短期で実通院日数もあまりない場合においては,別表Ⅱの実通院日数の3倍を上限とする基準よりもかなり高い金額が認定される傾向がある」ということのようです。
他方で,「通院期間が270日を超えたり,実通院日数×3の日数が180日以上になればなるほど,別表Ⅱの基準に収斂していき,基準以下の認定例は少なくなっている」という結論のようです。
但し、上記考察に用いられたデータについて、個々の判決の具体的事情まで分析すると、もっと多くのことが分かるかも知れません。
そこで、若干ではありますが、過去の裁判例に当たってみました。なお、上記考察は東京地裁に限定して考察していますが、DUONがある茨城県(地方)と東京地裁の格差を検討する趣旨も含めて、あえて地方の判決も調査してみました(もっとも顕著差はないように思われます)。
結論としては、原告側が赤本以下の傷害慰謝料を請求している場合を除けば、実質的に赤い本の基準を下回る傷害慰謝料を認定した裁判例はほぼありませんでした。
一見赤い本の基準以下に見えても、判決文を読み解くと(原告側の症状固定日の主張に無理があったり)実質的な通院期間との関係では、赤い本基準になっていると思われるものがほとんどでした(例えば、後掲神戸地裁平成25年10月10日判決)。
なお、今回のコラムの趣旨からは若干それますが、事故後の逃走を傷害慰謝料の増額事由と認定したようにも採れる大阪地裁平成25年11月21日判決は、興味ある裁判例ではないでしょうか。

裁判例

大阪地裁平成25年11月21日判決

頸椎捻挫、背部打撲等の傷病で、入院10日、通院期間261日(実通院日数157日)の治療を要した事案で、被告が本件事故後逃走したこと及びその後原告に対し謝罪したことも考慮して、金120万円の傷害慰謝料を認めた(赤本基準112万5333円、原告請求額130万円の1.5倍である195万円)。

東京地裁平成25年10月30日判決

(1)(原告A)頚椎捻挫の傷病で、通院期間263日(実通院日数59日)の治療を要した事案で、金90万円の傷害慰謝料を認めた(赤本基準107万6000円、原告請求額90万円)
(2)(原告B)頚椎捻挫の傷病で、通院期間635日(実通院日数159日)の治療を要した事案で、金100万円の傷害慰謝料を認めた(赤本基準128万1667円、原告請求額125万円)

神戸地裁平成25年10月10日判決

右膝打撲・挫創、頚椎捻挫等の傷病で、通院期間363日(実通院日数92日)の治療を要し(但し、症状固定日までの通院期間は307日)、後遺障害等級14級9号と認定された事案で、膝の痛みなどのために転職せざるを得ない状況になったこと等を考慮して、金120万円の傷害慰謝料を認めた(307日間の赤い本基準113万9333円、原告請求額158万円)。

東京地裁平成25年3月19日判決

頚椎捻挫の傷病で、通院終了までの期間127日(実通院日数46日)の治療を要した事案で、原告の受傷の程度、通院期間及び実通院日数を考慮して、金67万円の傷害慰謝料を認めた(赤い本基準69万8000円、原告請求額67万円)。

東京地裁平成25年1月23日判決

頚椎捻挫、四肢多発挫創の傷病名で、通院期間421日(症状固定日まで)の治療を要し、後遺障害等級14級9号と認定された事案で、本件事故の状況、傷害内容、治療経過を考慮し、金120万円の傷害慰謝料を認めた(赤本基準121万0333円、原告請求額171万2000円(救護義務違反も主張))

京都地裁平成22年8月19日判決

頚部捻挫、腰部捻挫等の傷病名で、通院期間545日(実通院日数571日)の治療を要した事案で、治療期間の大半は保存的療法を行っていたにとどまること及び傷害の部位程度を考慮し、金120万円の傷害慰謝料を認めた(赤い本基準125万1667円、原告請求額150万円)

東京地裁平成21年11月12日判決

外傷性頚部症候群(バレ・リュウ症候群)、腰椎椎間板障害等の傷病で、通院期間380日(実通院日数29日)、後遺障害等級14級と認定された事案で、金120万円の傷害慰謝料を認めた(赤い本基準金119万6667円、原告請求額158万円)

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