交通事故によるうつ病・PTSDの後遺障害等級認定と慰謝料

交通事故に遭うと、人は強い恐怖を感じるものです。大けがをして将来に不安を抱く方もおられるでしょう。

事故後精神状態が悪化して「うつ病」となってしまったり、事故がトラウマとなって「PTSD」の症状が出現したりすると「後遺障害認定」を受けられる可能性があります。高額な慰謝料を請求できるケースもあるので正しい知識を持っておきましょう。

今回は交通事故によって「うつ病」や「PTSD」になったときの後遺障害認定基準や慰謝料について、解説します。

1.うつ病、PTSDとは

1-1.うつ病とは

うつ病とは、心の健康を保つのに必要なエネルギーが不足し、気分が極端に落ち込む症状です。

  • 一日中憂鬱な気分が続く
  • 人生に希望を持てない
  • 不眠
  • 食欲不振
  • 涙が止まらない
  • 自殺したいと考えてしまう
  • 倦怠感
  • 頭痛

上記のような症状が典型です。「気分の落ち込み」といった精神面だけではなく、「頭痛、不眠」など身体面にも症状が顕れ、動けなくなって仕事も続けられなくなる方がおられます。自殺衝動が強いケースでは入院も推奨されます。

1-2.PTSDとは

PTSD(Post Traumatic Stress Disorder)とは強いショックを受けたり大きな恐怖を感じる出来事を経験したりしたとき、いつまでもその経験から抜け出せずに苦しむ症状です。
日本語では「心的外傷後ストレス障害」と訳されます。もともと戦争体験でPTSDになった方の症例で世に知られるようになりましたが、地震などの災害、レイプなどの犯罪、交通事故によってもPTSDになる方が多数おられます。

・フラッシュバック、再体験

日常で普通に過ごしているとき、突然交通事故に遭ったときの「恐怖感」を思い出して混乱する

・過覚醒

不眠や神経過敏状態が継続する

・回避行動

無意識のうちに車の多い通りや交差点を避けてしまう、そういった場所へ近づけない

・感情麻痺

強い恐怖の記憶のために感情が鈍化し、他人や周囲に関心をもてない

上記のような症状が数か月継続すると、PTSDである可能性が高いといえます。

2.うつ病、PTSDの後遺障害認定基準

交通事故が原因でうつ病やPTSDになった場合、後遺障害として認定される可能性があります。精神症状で後遺障害認定されるのは、以下の2つの条件を満たす場合です。

2-1.症状

下記のうち1つ以上の「症状」を認められることが、1つ目の後遺障害認定の要件です。

  1. 抑うつ状態
  2. 不安
  3. 意欲低下
  4. 幻覚や妄想が慢性化している
  5. 記憶や知的能力の障害
  6. その他の障害(回避や過覚醒、感情麻痺など)

2-2.判断項目

以下の8つの判断項目のうち、1つ以上に欠如や低下が認められることが2つ目の後遺障害認定の要件です。

  1. 日常生活上の対応
  2. 仕事や生活に積極性や関心を持つ
  3. 通勤や勤務時間を守れる
  4. 普通に作業を持続できる
  5. 他人とのコミュニケーションができる
  6. 対人関係を作れる、協調性がある
  7. 身辺の安全を自分で保持できる、危険を回避できる
  8. 困難・失敗へ対応できる

3.うつ病、PTSDで認められる後遺障害等級

交通事故におけるうつ病やPTSDの後遺障害は、「労災」の後遺障害認定基準を踏襲しています。以下で後遺障害として認定される等級や認定条件をみてみましょう。

認定等級 認定基準 具体的な判断基準
9級 通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、就労可能な職種が相当な程度に制限されるもの 1.就労している人、または就労の意欲はあるものの就労はしていない人
判断項目のうち4つ以上について、助言・援助が必要な状態または「日常生活上の対応」以外の1つの能力が失われている状態

2.就労意欲の低下や欠落により就労していない人
判断項目のうち「日常生活上の対応」について助言・援助を必要とする状態
12級 通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、多少の障害を残すもの 1.就労している人、または就労の意欲はあるものの就労はしていない人
判断項目の内4つ以上について,ときに助言・援助が必要な状態

2.就労意欲の低下や欠落により就労していない人
判断項目の内「日常生活上の対応」についておおむね適切に対応できる
14級 通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため軽微な障害を残すもの 判断項目の1つ以上について時に助言・援助が必要

具体例を挙げると、以下のようになります。

・9級に該当する場合

「対人業務につけない」など「職種」自体に制限が生じている

・12級に該当する場合

職種に制限はないが、就労に際しては相当な配慮が必要

・14級に該当する場合

職種に制限はないが、就労に際して多少の配慮が必要

4.後遺障害の等級と後遺障害慰謝料

うつ病、PTSDで認定される可能性のある後遺障害等級は、9級、12級、14級のいずれかです。
それぞれに認定されたときに支払われる後遺障害慰謝料の金額の相場は以下のとおりです。

等級 弁護士基準 自賠責基準 任意保険基準(各社によって金額が異なるので、およその相場)
9級 690万円 245万円 300万円
12級 290万円 93万円 100万円
14級 110万円 32万円 40万円

4-1.後遺障害慰謝料とは

後遺障害慰謝料とは、交通事故で後遺障害認定されたときに支払われる慰謝料です。
事故によって後遺障害が残ると被害者は大きな精神的苦痛を受けるので、後遺障害のないケースよりも慰謝料が加算されます。そこで別途支払われるのが「後遺障害慰謝料」です。

後遺障害慰謝料の算定基準には3種類があり、どの基準を用いるかによって算定金額が異なります。

・弁護士基準

弁護士が示談交渉をするときや裁判所が判決を書くときに適用する、法的な基準です。
3つの基準の中でもっとも高額になります。

・自賠責基準

自賠責保険が保険金を計算するときに適用する基準です。国が定めているので、どの保険会社でも一律の計算方法となります。金額的には3つの基準の中でもっとも低額です。

・任意保険基準

任意保険会社が保険金を算定するときに適用する基準です。各任意保険会社が独自に設定しているので、任意保険会社ごとに内容が異なります。ただ、だいたい似通った数字になるので、上記の表には相場の数字を入れました。金額的には自賠責基準に近くなります。

弁護士基準で後遺障害慰謝料を算定すると、通常、自賠責基準の2~3倍程度にまで増額されます。
被害者には法的な基準である弁護士基準で賠償金を請求する権利が認められます。

うつ病、PTSDでつらい症状に悩まされているなら、正当な補償を受けるべきです。保険会社から不当な減額を提示されないよう、示談交渉を弁護士に依頼してください。

5.うつ病、PTSDになったときの注意点

交通事故でうつ病やPTSDになった場合、以下のような点に注意が必要です。

5-1.素因減額

事故後にうつ病、PTSDなどの精神症状にかかった場合、保険会社から「素因減額」を主張されるケースが多々あります。素因減額とは、被害者側に損害拡大の要因がある場合に賠償金を減額することです。
交通事故に遭っても被害者が全員うつ病やPTSDになるわけではありません。その被害者に特別精神症状にかかりやすい性格的な傾向があったと主張されて素因減額されるのです。

ただ、交通事故ではうつ病、PTSDになってもやむを得ない状況も考えられ、必ずしも素因減額すべきとはいいきれません。また相手の主張する素因減額の割合が適切とも限りません。
素因減額の主張をされて賠償金の減額に納得できない場合、そのまま受諾するのではなく弁護士までご相談ください。

5-2.因果関係の否認

従前から性格的にうつ傾向にあった方などの場合、交通事故によってうつ病やPTSDになったと主張しても因果関係を否定されるケースがみられます。
ただ、性格的な要因があるとしても必ずしも事故と症状との間に因果関係がないとは言い切れません。「交通事故によってうつ症状、PTSDの症状が顕れた」といえるなら、素因減額されるとしても後遺障害認定を受けられます。
保険会社から因果関係を否認された場合には、うつ病やPTSDの症状が顕れた時期や症状の内容、経過を明らかにするとともに、それ以外に症状の原因となる事情がなかったことなどを丁寧に確認し、因果関係を証明しましょう。これらの対応には弁護士が必須となりますので、後遺障害を否定された場合にも必ず弁護士までご相談ください。

当事務所では交通事故が原因でうつ病やPTSD等の精神症状が顕れた方への支援体制を整えています。事故対応を弁護士に任せれば、嘘のように気持ちが楽になってうつ症状が改善していかれる方も少なくありません。茨城で交通事故に遭われたら、勇気を出して弁護士までご相談ください。